開催中の企画展

開催中の企画展

企画展「斎藤清 祈りの形象学(フォルモロジー)」4月12日より開催。

会期 2025年4月12日(土)ー6月15日(日) : 場所 斎藤清美術館第1展示室・ライブラリーコーナー

画像をクリックするとPDFが開きます。

2025年、終戦80年を迎えます。
平和の尊さを改めて深く心に刻み付ける年。
なのに戦火は今もやむことなく、火種はあちこちでくすぶっていて、
憎しみと悲しみの応酬が繰り返されている。

だからこそ、斎藤清の作品を提示したいのです。
終生「慈愛」という言葉を愛し、祈りを描き続けた画家の姿を。

「会津の冬」と並ぶライフワークの一つであり、
多くの人々に愛されている「慈愛」シリーズをはじめ、
斎藤清による仏教的テーマを扱った作品約70点を紹介します。

聖なるもの、そしてそれらに向けられてきた数多の祈りに対する、敬意と慈しみ。
奈良の古仏や会津の石仏のイメージに込められた、
画家の深い想いに触れていただく展覧会です。

【会期・開館時間】
・2025年4月12日(土)~6月15日(日)
・9:00~16:30(入館は16:00まで)

【休館日】
・毎週月曜日 ※ただし、4月28日、5月5日は開館。
・5月7日(水)

【観覧料】 
・一般    510円(410円)
・高・大学生 300円(200円)
・中学生以下無料
※( )は15名以上の団体料金

【ギャラリートークのご案内】
・会期中の第2・4日曜日
・ゴールデンウィーク中の土・日曜日
時間:14:00~(40分程度)

開催中の企画展

絵本『炭ヤク里ノ子』・『北海ノ子』を味わう! 斎藤清美術館×筑波大学の新たな試み。

会期 2024年9月14日(土)~ : 場所 斎藤清美術館ホール


『炭ヤク里ノ子』は炭焼きを生業として暮らす会津の山村の、『北海ノ子』は小樽近郊の漁村での生活ぶりが、
子どもたちのまなざしを通して生き生きと語られている。著名な児童文学者 川崎大治(かわさき・だいじ 1902~80)による
オノマトペを多用したリズミカルな文章も素晴らしい。

斎藤清は、とても多才な画家です。
当館は、そうした仕事ぶりを伝える作品群も多数所蔵していますが、
中でも自慢のコレクションの一つが、
『炭ヤク里ノ子』(1942年)・『北海ノ子』(1943年)。
若き日の斎藤清が挿絵をてがけた絵本です。

戦時中に制作・配給されたとあって、
ところどころに時局をうかがわせる場面も出てきたり、
また使われている紙も、製本の仕方も、けっして上等ではありませんが、
表紙・裏表紙に加え、見開き11ページはすべてカラー。
何より、一生懸命家業を手伝う子どもたちのけなげさや愛らしさ、
そして彼らを包み込むように絵本全体に満ちているあたたかさに、
子どもたちに向けられた斎藤のまなざしが透けて見えるようで、
しみじみと胸を打たれる、隠れた名品です。

一方で、公開には様々な問題が生じました。
戦時中の本であるため、長期の展示には厳しいコンディションであること。
絵本という形態ゆえに、すべての場面を鑑賞してもらうのは不可能であること。
どうしたら、この絵本の魅力を多くの方に、正確に知ってもらえるのか…

この悩みに向き合ってくれたのが、これまでも様々な映像制作を通して、
斎藤清美術館そして柳津町の魅力発信や地域活性に取り組んでくださっている、
村上史明助教率いる筑波大学体感体験ラボ所属の学生のみなさん。
実はなんと去年から進んでいたこのプロジェクトが、
「再考・会津の冬」第Ⅱ期展開催と合わせ、ついに、お披露目となりました!


美術館ホール全体が、『炭ヤク里ノ子』・『北海ノ子』を鑑賞する空間に。
筑波大学のみなさんの重ねに重ねた試行錯誤、そして斎藤清へのリスペクトがつまった展示です。


「絵本は絵本として味わう」。これが展示の根幹となるコンセプトでした。そこで、往時の色や状態を復元したレプリカを作成。
紙も、オリジナルに近い手触りのものを吟味しているんですよ。


レプリカはもちろん、実際に手に取って、読むことができます。
この絵本を置いているスペースも、「読む」ということを意識した設えになっています。


今回の展示の、もう一つの重要なコンテンツ、ARによる動画。
会場にあるiPadを、絵本の各場面を拡大したバナーにかざすと…


iPadの画面上で、その場面の絵が動く、音がする! そして、各場面の解説も読める!
動きと音が加わることで、絵本が伝える当時の炭焼きや魚市場の様子が、よりリアルに。
なお、この音声、学生のみなさんが音源集めに奔走した努力の結晶。必聴ものです!


今回のプロジェクトに取り組んでくださった、筑波大学体感体験ラボのみなさん。
柳津町に泊まり込み、この展示を完成させてくれました。

絵本をご覧になった時きっと、「当時はそうだった」「懐かしい」
という感慨を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。
斎藤清作品としても、そして往時の様子を今に伝える資料的価値の点からも、
とても貴重な、『炭ヤク里ノ子』・『北海ノ子』。
ぜひ、味わいにいらしてください。

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