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秋季特別企画展「斎藤清VSピカソ」

前期:2021年9月18日(土)ー10月24日(日) 後期:10月26日(火)-11月28日(日)

木版画とリノカット。
ともに版材を彫り、出っ張った部分に色材をのせて摺る、いわゆる「凸版画」に分類される技法です。
版材は、シナベニヤをはじめとする木材、あるいは床材として使用されているリノリウムと、ともに入手しやすく、
さらに銅版画やリトグラフのように特殊な道具も薬剤もいらないから、版材と彫る道具があれば挑戦できます。
実際、木版画はほとんどの人が学校で一度は制作したでしょう。
一見、取っつきやすく、親しみやすい。
しかし、ひとたび真摯に向き合えば、底知れぬ表現の可能性を秘めていて―

ピカソのリノカット、そして斎藤清の木版画。
その深淵に挑んだ二人の芸術家。
彼らが生み出した驚異のイメージたちが、今秋、斎藤清美術館に集います。

91年の生涯で、絵画、彫刻、陶芸と膨大かつ多彩な作品を生み出したピカソ。
版画も約2,000点制作したといわれています。
リノカットは1958年から本格的に取り組み、63年までに約100点を残しています。
柔らかくて滑らかな版面、ゆえにどの方向にも容易に彫り進められるというリノカットの利点を生かすべく、
独自に手法を開拓しながら、非常に大胆でのびやかなイメージを創り上げています。
晩年になってもなお、画面にあふれる生命感や躍動感。
20世紀美術の巨人の凄さを改めて感じる作品ばかりです。

目に見える事物から不可視のものまで、あらゆる事物事象を木版画で描出する斎藤。
様々な木目を駆使して、猫のしなやかな体つきや水の流れ、はては人の内面に渦巻く感情までをも表し、
画面全体に施した雲母摺りで、もやがかる、あるいは雨に煙る空気感を演出する。
さらに「会津の冬」シリーズの、雪国に生きる人々の存在さえ伝わってくるような、降り積もる雪の精妙なグラデーション-
「彫る」「摺る」という工程を通してこそ得られる版板や画材のマチエールを、自在に操る技術とセンスの高さ、
そして斎藤もまた、これらの表現手法を独学の試行錯誤の中から編み出して、多彩なイメージを生み出していることに、圧倒されます。

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雲母の白い輝きが表す、新春の古寺の空気。
斎藤清《門 鎌倉(F)》1973年 紙、木版 斎藤清美術館蔵     

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深い陰影が伝える雪の重み、その下に確かにある人々の生活。
斎藤清《会津の冬(57)猪苗代》1982年 紙、木版 斎藤清美術館蔵    

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木目で葉脈をどう表現しているか、実際の版木で。
斎藤清《地の幸》1989年 紙、木版 斎藤清美術館蔵   

本展では、そんなパブロ・ピカソによるリノカットの名品17点と、斎藤清の木版画の代表作約60点を、
前期・後期に分けて紹介します。
また会場には、イメージ形成の過程がうかがわれる貴重な斎藤の版木も。
二つの版画技法のそれぞれの到達点ともいうべき作品たちを楽しんでご覧になっていただきながら、
版画表現の無限の可能性と、それを追求し続けた画家たちの気概を感じていただければ幸いです。

◆会期
 前期:9月18日(土)~10月24日(日)
 後期:10月26日(火)~11月28日(日)

◆開館時間
 9:00~16:30 入館は16:00まで

◆休館日
 月曜日 ただし、9月20日(月・祝)は開館、翌21日(火)休館

◆会期中は、特別講演会、ミュージアムコンサート、ナイトミュージアム、またピカソ独自のリノカット技法を体験できるワークショップ等、
 イベントも盛りだくさん。各詳細は、本展チラシ等でご確認ください。

◆新型コロナウィルス感染症拡散防止のため、開催期間や各種イベントが変更・中止になる場合がございます。
 その際は、当館HP等でお知らせいたします。
 ご理解・ご協力のほどお願い申し上げます。

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冬季企画展「コレクターズ episode 1」

前期:2021年12月11日(土)ー2022年2月13日(日) 後期:2022年2月15日(火)-4月10日(日)※毎週月曜日及び年末(12/29~31)休館。ただし、1/3(月)・10(月・祝)、3/21(月)開館、1/11(火)、3/22(火) 休館

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【コレクター Collector】
 収(蒐)集家。
 特に、組織から独立してコレクションを行なう個人の収集家を指すことが多い。
 保存、公開、調査研究を目的とする美術館の「コレクション」とは異なり、
 趣味やアーティストのサポート、投資など目的は多様で、内容も系統的だったり、無系統だったりと、
 収集家の好みや意図を反映して様々である。
 組織内での審議を経ないため迅速な収集活動を行なえることも特徴。
 また個人コレクションが母体となって発展した美術館も少なくない。
 (参考 『現代美術用語辞典』(アートスケープ)、『和英対照 日本美術用語辞典』(東京美術)等)

美術作品を手に入れる。
美術愛好家にとって究極の喜び。
時にそれは、個人の想いをはるかに超える、大きな意義を持つことがあります。

ゴッホ、ゴーギャン、モディリアーニ、村山槐多、関根正二…
独自に新しい表現様式を開拓し、後世の人々に大きな影響を与え、美術史にその名を刻む、偉大な芸術家たち。
彼らの多くは、あまりに先をいくイメージゆえに、同時代人にはほとんど理解されないまま、生涯を終えました。
そのまま忘れ去られ、作品も散逸、その功績は永久に失われていたかもしれない―

そうはならなかったのは、
そこに、彼らと同じ先を見通す眼と感性を持つ「コレクター」がいたから。
先進的な芸術家が生きている時に、優れたコレクターがいるということ。
その幸運が、作品が正しく後世に伝わるか否かの命運を分けるのです。

斎藤清にも、その作品、その人となりを愛してやまないコレクターが数多くいます。
現役の医師として活躍されている山下武右(やました たけすけ)氏は、
偶然の出会いから斎藤清の作品を知り、
「affinity(肌が合う)のあるもの」をポリシーとして収集を続けられています。
斎藤清への想いと、独自の審美眼を通して選び抜かれたコレクションの特徴は、
1950年代-60年代作品の充実ぶり。
実は、一般の認知度や人気は、決して高いとは言えない作品群です。
しかし、斎藤清という芸術家を語る上で、
この50-60年代というのは、その後の唯一無二の版画表現形成へと至る、極めて重要な時代。
その優品を数多く有しているのが、山下コレクションなのです。

この貴重な作品たちをまとまって見られるのは、
2017年、地元・周南市美術博物館で開かれた大規模な斎藤清展以来のこと。
さらに本展で紹介しているものはすべて、当館未収蔵作品となります。
おそらく最初で最後の機会。
斎藤芸術の原点にして、その豊かな実りを今に伝える稀有のコレクションをお楽しみください。

※新型コロナウィルス感染症拡散防止のため、開催期間が変更・中止になる場合がございます。
 その際は、当館HP等でお知らせいたします。
 ご理解・ご協力のほどお願い申し上げます。

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夏季企画展「斎藤清 異形のイメージ」

2021年7月3日(土)ー9月5日(日) ※毎週月曜日休館。ただし、8月9日(月)は開館、翌10日(火)休館

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昨今、「怖い絵」がブームになっています。
つい最近も、日本近代の頽廃的でグロテスクな表現を紹介した展覧会に、
コロナ禍にも関わらず、多くの人が詰めかけ、大好評だったそうです。

「怖い絵」シリーズで知られる西洋文化史家の中野京子氏は言います―

「生ぬるい日常を揺さぶり、鈍麻した意識を覚醒させ、
それまで気づかなかった新たな美、新たな視点を知らしめることも芸術表現の一つだ。
そのため創り手は固有の鋭い感覚で、奇異、異様、異類、異体、そして怪の中に人間の本質を見出し、
且つ、それを巧みに描写して受け手に突きつけようとする」
(中野京子『異形のものたち 絵画の中の「怪」を読む』NHK出版 2021年)

実は斎藤清にも、ミステリアスな、ややもすると、こわいような作品が存在します。
意外でしょうか?
「モダンリアリスト」とも称された斎藤清。
常に現実にある風景やものを題材として、唯一無二のイメージを創り上げた画家。
一方で、若き日には、ムンクやルドン、ゴーギャンといった芸術家たちに魅かれ、
創作上のスランプに陥った60年代には、内向的・哲学的なテーマに取り組むことも。
何より、モティーフの本質を鋭く見抜く、たぐいまれなるまなざし。
そんな斎藤が描いたものの中に、時に底知れぬ深淵が潜むのは、むしろ当然なのではないでしょうか-

その深みにふれてもらうため、
本展は、「異形」をキーワードに、
少し変わった展示方法で作品を紹介します。
まずはイメージと向き合ってみてください。
かたち、色、光、影。
見慣れた作品のはずなのに、そこにただならぬ「何か」を感じたとき。
その作品は、まったく異なる姿で、あなたの前にたち現れるのです。

※新型コロナウィルス感染症拡散防止のため、開催期間や各種イベントが変更・中止になる場合がございます。
 その際は、当館HP等でお知らせいたします。
 ご理解・ご協力のほどお願い申し上げます。

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春季特別企画展「斎藤清とハニワ!」

2021年4月24日(土)ー6月6日(日)

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「鶯谷で電車を降り、国立博物館の裏から入って知っている人の所に行き、埴輪を見せてもらった。
そのころは、国宝級の「踊る埴輪」を手にとって見せてもらえた時代だった」(斎藤清『私の半生』より)

斎藤清が「ハニワ」と出会ったのは、
戦後間もない頃、帝室博物館から新生なったばかりの、東京国立博物館でのこと。
1947年に創刊した『国立博物館ニュース』に、題字やカットを提供することになり、
その縁で、同館が所蔵する考古物品の数々を間近に見るという貴重な機会を得たことから、
両者の関係は始まりました。

ちょうどこの頃、欧米では抽象表現が席巻し、その潮流が日本の美術界にも押し寄せていました。
そのただ中にあって、「雪では古くて、これではだめだ」と、進むべき方向を模索していた斎藤清。
簡潔かつユニークなフォルムの中に深い精神性を宿す埴輪の造形は、
斎藤の創作意欲を大いに刺激し、
1950~60年代の主要なテーマとなったばかりでなく、
その後もイメージソースの一つとして、画家の中に深く長く根を下ろしていくのです。

本展は、そんな斎藤清の埴輪・土偶の作品に焦点をあてた展覧会です。
斎藤清は、フォルムを単純化したり、デフォルメしても、モティーフの特徴を正確に捉え描出します。
そのため、作品のモデルが何か特定することができます。
顏や首まわり、手首に今も鮮やかに朱が残る、茨城県水戸市出土の「埴輪 両手を挙げる女子」、
青森県から出土した、肩から胴部、大腿部に施された文様が印象的な、重要美術品指定「遮光器土偶」。
作品に登場する考古物品のほとんどは、東京国立博物館に所蔵されているものです。

そして2021年。
古代日本の造形と斎藤清の作品が一堂に集います。
斎藤は、埴輪に何を見たのか。
両者が邂逅する展示室で、
「手に取って見せてもらえた」という画家の強烈な体験と感動を、
追体験していただけたら幸いです。

本展は、独立行政法人国立文化財機構文化財活用センターによる「国立博物館収蔵品貸与促進事業」により開催するものです。


《遮光器土偶》 縄文時代晩期(秋田県美郷町六郷石名館出土) 東京国立博物館蔵 (Image:TNM Image Archives)


斎藤清 《土偶(B)》1958年 紙、木版 斎藤清美術館蔵


《埴輪 右手に棒を握る女子》 古墳時代(栃木県真岡市亀山出土) 東京国立博物館蔵(Image:TNM Image Archives)

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斎藤清 《ハニワ(F)》1968年 紙、コラグラフ 斎藤清美術館蔵

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「斎藤清が見た日本 求め続けた会津 KIYOSHI’S RETURN HOME」

2020年9月19日(土)ー2020年11月29日(日)

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「父が北海道のあっちこっちに本籍を移し、
どこが自分のふるさとかと思うことがあった。
東京に出ても、鎌倉に移っても、どこかエトランゼとしての感覚が、
心の底にオリのように残っていた。
「一体、自分はどこの県の人間なんだ」と自問することがあった」
(『私の半生』より)

生涯の大部分を東京や鎌倉など異郷の地で暮らし、
欧米やアジア諸国も訪れている斎藤清。
日本や世界の各地を描いた作品群からは、
彼のフットワークの軽さ、グローバルな視線が伝わってきます。

一方、多くの名作の舞台となった会津に対して、
斎藤は、生まれ故郷でありながら、
「懐かしい」という言葉では言いつくせない、
複雑な感情を抱き続けていました。
「自分はエトランゼ(異邦人)」という想いを胸に会津に通い、
画家が見つめ描こうとしたもの。
それは、風景の美だったのか、それとも―

異郷にあった会津人・斎藤清にとっての、故郷・会津。
その意味を改めて問い直したとき、
斎藤清の描く会津、その真の姿が見えてきます。

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