ANOTHER ART HISTORY Kiyoshi Saito

Exhibition

切り口を変えるたび、 新たな発見がある。

斎藤清美術館のコレクションは、木版画、コラグラフ、銅版画、リトグラフ、墨画、油彩画、デッサン・スケッチから、版画の原版、愛用の画具、年賀状・手紙といった資料等も含め、約1,000点にのぼります。画家の名を冠する美術館として、作品・資料の収集、保管、調査研究を重ねながら、その画業を国内外の方々に伝える活動に努めています。その一部を紹介いたします。
同時代の美術の流れと真摯に向き合いながら、「自分の版画道は、人間形成の道」と、最後まで研鑽を怠らなかった斎藤清。テーマも表現技法も幅広く、驚くほど多彩な魅力を放っています。アプローチの仕方でいくつもの違った表情を見せつつ、そこから画家の深い思想や生きた時代背景までもが見えてきます。

作品は語る。
画家の想い、生きざまを

「ムンク×斎藤清」

(2017.10.7-10.29)

「北欧的な幻想や夢に共感を覚え、マッスとしての表現に憧れた」-ノルウェーの画家、エドヴァルド・ムンク。若き日に美術誌で知ってから、斎藤清にとって重要な画家であり続けました。斎藤はムンクの芸術に何を見たのか。ムンクとの関係性を通し、50年代から70年代に至るイメージの変容とその意味を読み解きます。

「LIFE 1907→1997」

(Season1:2019.6.29-9.16 
Season2:2019.12.7-2020.4.19)

変化を恐れず、スランプに陥れば未知の表現技法に挑み、新しいイメージを模索し続けた斎藤清。世界が魅せられた50年代、スランプの果てに次のステップへのきっかけをつかんだ60年代、そして回帰と深化を続けた70年代以降。作品の変遷をたどることで、そこに込められた画家の想いが見えてきます。

「斎藤清が見た日本 求め続けた会津」

(2020.9.19-11.29)

人や、人が暮らしていることを伝えるモティーフが、必ずといっていいほど描き込まれる会津の風景。16年間も住処としながら不思議なほど人の気配がない鎌倉の寺社。両者のイメージの違いから見えてくるものとは。会津と、日本各地をテーマにした作品との比較を通して、斎藤清の生まれ故郷への想い、会津を描くことの意味を考察します。

「大コレクション展」

(2022.4.23-2023.4.2)

1950年代の色面構成から、様々なマチエールを取り入れていく1960年代を経て、やがて画面は深い陰影をまとい出す。変化し続ける表現と、生涯一貫して追求した「シンプル」という理念。「会津の冬」や「慈愛」等の代表作の数々から、版木・画具といった貴重な資料類をも含む斎藤清美術館コレクションを全4期11のテーマで紹介、唯一無二のイメージへと至る模索と挑戦の画業をたどります。

多彩な魅力を味わう

「BEST OF THE BEST」

(第1部:2017.4.4-6.25 第2部:2017.7.1-10.1)

テーマも表現技法も実に多彩な斎藤清の作品を、7つのカテゴリー「白」「佇む」「ピープル」「凝視」「想い」「To Travel is To Draw」「アンソロジー」で紹介。創作スタイルやその変遷が一堂に見渡せます。これまで注目されてこなかった作品にこそ、斎藤芸術の本質が潜んでいます。

代表作を新視点から問い直す

「ふぶく日のシルエット」

(2018.12.1-2019.2.24)

「あたたかい」「懐かしい」。そう語られ、愛されている《会津の冬》。でも、若い人は感嘆します、「雪のもこもこ感が可愛い!」。そして画家自身は言っています、「構図なんだ」。詩情、かたち、色、構図。心を空っぽにして向き合うと、新しい魅力が見えてくる。従来の言語とは違うアプローチで《会津の冬》を紹介します。

「もうひとつの会津の四季」

(2019.3.16-6.23)

2000年9月、皇太子雅子妃両殿下が会津を訪れました。行く先々で目にされたであろう風物を、斎藤清が描いた四季折々の風景画で再現。その土地に暮らす人々に向けられてきた天皇家のまなざしと、斎藤清が描き続けた会津の風物。両者を重ねることで見えてきた、もう一つの「会津の四季」です。

「斎藤清 異形のイメージ」

(2021.7.3-9.5)

常に現実にある風景やものを題材とする斎藤清。その作品は一見明快ですが、よく見ると、名状しがたい「何か」を潜ませていることがあります。謎めく主題、風景の中にひそむ不穏な気配、一見ごく普通のモティーフが垣間見せる異形の姿。モダンリアリスト・斎藤清が描く、不思議で不気味なイメージ世界へご案内します。

筆致・技巧の妙に驚嘆する

「プラチナ・モダーン 
斎藤清「雲母(きら)」

(2018.4.21-7.16)

ガラスのようにきらきら光って、鱗のようにうすくはがれる。不思議な特徴を持つ鉱石に人は古来より魅せられ、様々に利用してきました。斎藤清も雲母を愛用した画家。単に画面を光らせるためではなく、時にマチエールとして、あるいは色彩として。自由自在、他では見られない斎藤清ならではの表現をお見せします。

「SUMI 斎藤清の墨画」

(2019.9.21-12.1)

きっかけは、同郷の画家の声がけ。以降、「版画が出来なくなったときの、進むべき方向を感じ取った」と、晩年にいたるまで制作し続けました。自由でオリジナリティ豊かなモティーフと、墨特有の表現を自在に操る卓越した技量。版画はもちろん、水墨画とも一線を画する「斎藤清の墨画」。画家・斎藤清の凄みを実感できます。

「木目・百変化!」

(2020.5.23-9.13)

シンプルなかたちと構図を生涯追求した斎藤清。一方で、版材のマチエール、特に木目が持つ豊かな表現力に注目し、様々なイメージに活用しています。山河、動物や植物、さらには人の内に渦巻く情念まで-森羅万象、あらゆるものを木目で描出する卓越した造形感覚。そこからぜひ、画家が木目に込めた思想を読み取ってみてください。

作品がつなぐ、
人との縁、世界の美術

「The Style 
アメリカが愛した斎藤清スタイル」

(2017.11.3-2018.1.28)

作品の芸術性に真っ先に気が付いたのも、京都の美やコラグラフを教えたのもアメリカ人。斎藤清も各地で個展の開催や版画の実技指導を行い、当地の画家と親しく交流を重ねました。各地の美術館には初期のものを中心に貴重な作品が収蔵され、多くのファンがいます。今も続く両者の深いつながりを、作品や資料から明らかにします。

「台湾コネクション
 版画/蔵書票がつないだ、
『台湾×斎藤清』展」

(2018.7.22-9.9)

小さな紙面に広がる繊細かつ趣向を凝らした図案。「紙の宝石」蔵書票(エクスリブリス)は、ヨーロッパで生まれ、明治時代に日本に、そこから台湾へと伝来し、今に至るまで数多くの作品が生みだされ、作家・愛好家間の交流が続いています。小さな版画/蔵書票から日本と台湾、そして斎藤清とのつながりが見えてきます。

「斎藤清とハニワ!」

(2021.4.24-6.6)

「《会津の冬》では、古くてだめだ」。欧米で主流となっていた抽象美術にいち早く反応し、自分はどのようなイメージを構築していけばいいのかという問題と向き合う中、東京国立博物館で出会ったハニワたち。その造形から斎藤は独自の抽象表現のヒントを得ます。斎藤芸術の根幹を形成するにいたった、画家と博物館の関係を紹介する展覧会です。